青森まで

 相談者、依頼者はさまざまです。
 皆さんが常識的、協力的であるとは限りません。その反対の場合が多いものです。
 今後の業務の参考になるかと思いますので、体験談の一例を述べます。
 まず相談者である相続人は自分のみが相続人であると思い込んでいました。ところが、お話を伺ううちにもう1人相続人がいることか判明しました。
 このような場合、多くの相談者はなぜそのような者まで相続できるのか、と反論するものです。私の判断が誤っているのではないか、と思いがちです。
 それでは他の事務所または相談会へ行かれたらいかがですか、と私はお話ししています。無理に押し付けることはしません。たいていの相談者はご自分の主張は正しいと思うものですから。
 時間が経つと私の説明が正しかったと言われるものです。それでも不満を持つ方がいるものですが。法律がまちがっている、と言う方もいますので。
 さて、まずは以上のような経過の後に、相続人は2名であることが確定しました。そして2人目の方(青森県在住)へ連絡を取ることになりました。
 しかしながら、この相続人へ2度郵便を差し出したのですが、何の返事も電話もありませんでした。電話番号を調査したのですが、電話会社からは拒絶されました。相続が発生したので連絡を取りたいので、と申し出たのですが、契約者からの通知拒否の連絡があるので、理由にかかわらずお教えできない、とのことでした。
 仕方がありませんので、こちらから青森まで出向くことにしました。
相続人の住所は判明していますので、再度郵便を差し出して当方の事務所へ来所願いたい、と要望することは可能です。
 しかし、おそらく協力してはもらえないでしょう。それは経験的にわかります。
 電車、ビジネスホテルを予約して出かけました。当然のことですが、これら交通費、宿泊費は実費ですので後日、精算します。ですから、同意書に正確に記載しておく必要があります。
 そして、運よく面談できました。相続人が高齢のため、成人している実子が同席したいということになり、了承しました。
 相続人はこれまでの経過を語り、法定分割では納得できない、と述べました。これはよくあることです。私は依頼者である相続人へ要望は伝えます、とのみ告げました。
 被相続人には遺言がありませんので法定分割となるのですが、それまでの経過や人間関係などからすんなりと合意するのは困難な場合が多々あります。
 したがって、相手方の話が単なる苦情や不満であってもその場で否定せず、それでは○○さん(依頼者)へご要望をお伝えします、という対応がよいと考えます。
 私どもは弁護士ではありませんので、依頼者に替わって交渉することは避けるべきでしょう。
 確定した相続人、調査した相続財産、相続人各自の相続額を正確に文書にして相続人へ渡し、受け入れるかどうかは相続人本人に任せることがたいせつと考えます。代理行為と誤解されないように注意してください。
 後日、弁護士へ依頼したので、という連絡があれば、業務は中止します。相続人全員の依頼が前提ですので、踏み込みすぎないことが重要です。
 この案件も最終的には法定分割で合意しましたが、やはり相手方相続人は最後まで難色を示しました。どうしても合意が困難であれば。双方に調停をすすめるべきでしょう。
 その他、合意に至るまでは双方にさまざまな主張がありましたが、それらはすでに述べたように聞いておくことにとどめることがたいせつです。こちらが決着するべきではありません。
 そして、距離的な問題(埼玉⇔青森)もありましたが、当方から出張したことも合意できた一因と思われます。    この点も参考にしてください。

                                            以  上

                                     塾長 黒 田 広 史


2023/09/19

 今年は夏祭が開かれた町内会も多かったのではないで ...>>続きを読む



株式会社法務研修館

【所在地】
〒330-0803
埼玉県さいたま市大宮区高鼻町1-36-1-2F
【電話番号: フリーダイヤル】 0120-54-4153(携帯・PHS対応可)
(受付時間) 平日 10:00 - 18:00