ぶっつけ本番体験記
※今から33年前の私の「開業体験記」です。見直してみると現在ではそぐわない箇所がありますが、ご了承ください。少しでもご参考になれば幸いです。
ぶっつけ本番開業記
どのような資格でも持っているだけでは意味がありません。自分のため、人のために役立たせてこそ価値があります。しかしながら、資格は合格するまでがひと苦労。そして、取得した後も、受験以上に大変です。
資格を実務に活用し、報酬を得て、事務所を経営し、生活していく…楽ではありませんが、自分の能力を業務や事務所運営の隅々に反映させられる喜びがあります。
そして、依頼者の方々に感謝された時の充実感はこのうえないものです。
私の場合は、「ぶっつけ本番」でした。
こらから行政書士として独立されようとしている方々に、私の短い体験が少しでもお役に立てれば幸いです。一般論ではなく、体験や感想を箇条書きにしたので、ご了承下さい。
■実務学校へ通学
①合格後、すぐに「○○専門学院」へ通学。終了後、登録の準備を始めた。※開業は合格した年が最適。
②机の前に座って依頼者を待つという考えが、こちらから行動する行政書士へと変わった。
③行政書士にも経営・営業・広告宣伝が必要であることを知った。
ことに、ひとりの経営者であるという考え方に初めて気づかされた。
④行政書士は「経営と法務に関するコンサルタント」であるという位置づけは新鮮だった。活動範囲の広がりを感じた。
⑤開業用の参考書だけを読んでいたのでは、独立の意思は生まれなかった。現実に行動している行政書士との交流が大切。
■開業時のあいさつ
①訪問できる所へは出向き、事務所を開設したことをはっきりと述べた。町内の各家庭にもまわった。その際、名刺と名入れタオルを持参した。
②あいさつ状はハガキがよい。封筒を使ったが、料金も割高になり、手間もかかる、ハガキは保存してもらえることが、後のダイレクトメールでも体験した。
③あいさつ状の送付先は、親類、友人、知人、以前の職場、買い物先など、約1000通。
④支部の先輩書士の方々には必ずあいさつ状を出す。新規加入者のほとんどが、この程度の礼儀すら欠いている。あいさつは営業の第一歩。
⑤名刺に記載する業務は3~5種類程度にする。裏面すべてに業務内容を印刷してしまい、あまり読んではもらえなかった。
■事務所備品について
①ワープロ、コピー、ファクシミリ、ポケットベルをそろえた。ワープロは必須の技術。普通文書は打てるようにしておく。(まだパソコンは普及していない)※当時はワープロが出始めたころ。携帯電話はまだ普及していない。
②書籍は、自由国民社の出版物が実用的でおすすめ。
③自宅で開業したので、開業年度は約130万円の支出で済んだ。支出の多かったものは事務用品費40万円、図書費、通信費が各15万円。
■1年目の体験から
①開業1年目は雑用の海。依頼も小規模なものが多い。しかし、本格的な依頼も3件あった。宅建免許申請、有限会社設立、軽貨物運送届出。すべて、あいさつ状を出したところからの依頼。
②行政書士の業務は残念ながらまだまだ知られていない。何をする資格者なのか、業務内容をはっきり使える。
③サービス業の個人商店を開店したという意識が必要。相手が頼みにくるものだという考えは捨てる。
④着手金を受け取ってから業務に着手する。依頼者も協力的になり、業務がすみやかに運ぶ。こちらにも責任感が生まれる。
⑤電話は「はい、○○事務所です」と受ける。自宅で開業しても同様。名前だけの人が多い。
⑥税務署へ届け出て、会計帳簿を作成する。最低、現金出納帳は用意する。現在の事務所の経営状態、月々の必要経費がわかり、売上目標が数字として確認できる。経営者としての意識が養われ、簿記の第一歩となる。
⑦司法書士、税理士と知り合いになる。会社設立、登記簿謄本の見方、税務等指導を受ける。
行政書士の業務は多方面ですから、自分に適した分野は必ずあるはずですし、また見出さなければなりません。そのためには、開業して実務に触れなければ不可能です。
独立して生活できるのか?
誰しも最初はそう考えます。しかし、およそ世の中に保証された商売があるでしょうか。もし、どうしても安全な方向を求めるのでしたら、開業は見送られたほうがよいでしょう。
開業は投資です。まず、独立開業。その行動なくしては何も始まりません。そこから経営方法や業務能力を自分で身につけてゆくのです。行政書士の新しい時代が来ることを信じて、皆さんとともに活動を続けたいと思います。
ご活躍を祈ります。